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新型コロナウイルス感染症支援に関する神戸市と共同した活動について

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    はじめに

    神戸市看護大学は、神戸市から委託された新型コロナウイルス感染症電話相談センター並びに新型コロナウイルス感染症軽症者宿泊療養施設への支援を教職員および学生が実施しました。この活動についてご報告します。

     

    神戸市看護大学の協力支援について

     

    支援体制

    1.学内組織図
    神戸市看護大学は、神戸市からの新型コロナ感染症軽症者宿泊所の設置に向けた協力依頼を受けて、学内で学長・局長のもと神戸市新型コロナ感染症軽症者宿泊療養施設の支援を決定しました。学内の担当部署としては、地域連携・国際交流・生涯教育センター(仮称)に神戸市看護大学新型コロナウイルス感染症支援チームを置き、支援の中核を担うとともに神戸市からの要請の窓口並びに学内全教職員の窓口と調整を行い、全学教職員の協力のもと支援活動を行っています(図1)

     


    図 1 神戸市看護大学における新型コロナウイルス感染症支援組織

    2.支援内容

    (1)電話相談

    神戸市看護大学では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って、保健所保健師業務である電話相談を、兵庫県には3/26~5/31に、延べ26回、協力教員12名(希望教員16名中)、学生(大学院生・看護師資格を持つ編入生)7名(希望学生9名中)、神戸市には電話相談の後方支援および検疫所から連絡があった健康観察者の健康確認について4/2~5/31に、延べ54回、協力看護教職員19名(希望者21名中)が行いました。

    (2)軽症者宿泊療養施設

    ①支援の実際:神戸市から委託され、4月11日から開設された新型コロナ感染症軽症者宿泊療養施設へ、開設初日から継続して、24時間体制で、5月末までに、協力勤務延べ99回、協力看護教職員18名(希望者21名中)を派遣しました。宿泊療養施設での関係団体のネットワークを図2に示します。


    図 2 神戸市軽症者宿泊療養施設:関係団体ネットワーク

     

    ②支援内容:神戸市看護大学の宿泊療養施設への主な支援内容は、
    1)居室、共有部、詰所、事務所等の開設準備支援、2)入所者支援の看護業務等を行いながら、3)看護管理体制構築支援(開設当初より、継続的なシフト勤務で看護業務を実施しながら、必要な資料等の作成を支援し、フロア看護マップ、管理日誌、業務マニュアル、インシデントレポートの作成を神戸市と協力して行いました)、4)患者用パンフレット作成支援(①療養施設での過ごし方(図3)②退所後の過ごし方)、5)支援者支援(①健康チェック表の作成、②支援者のこころのケアリーフレットの紹介③COVID-19について④緊急時の対応⑤身体症状・精神的ケア)を行っています。今後、COVID-19感染症と看護に関する研究に取り組む予定としています。

    図 3療養施設での過ごし方パンフレット

    (3)神戸市の新型コロナウイルス感染症軽症者療養施設の療養者等に対する学生による手作り布マスクとメッセージの提供

    感染拡大に伴い、市場でマスク不足が深刻化していたことから私たちも布マスクを作成し必要としている人に届けたいという学生と教職員有志による「いちかんマスクプロジェクト」が発足し、趣旨に賛同した学生がマスクの作成を行いました(作成経費は教職員からの寄付)。作成された手作り布マスクは、励ましのメッセージを同封し、療養施設を退所される療養者の皆様に届けました。療養者の方からは、「退所後にマスクを買いにいかないとと思っていたので嬉しい」と、喜んで頂いきました。

    また、緊急事態宣言下で、大学への通学や外出を自粛している学生に、新型コロナウイルス感染患者の療養施設での隔離生活と看護を考える機会が設けられました。学生委員会から学生へ施設での療養患者にメッセージを募集したところ、イラストや思慮深く未来を照らすメッセージが集まり、軽症者施設の壁に掲示し、入所者を勇気づけています。

    (4)職員有志による手作りフェイスシールドプロジェクト

    軽症者施設において、フェイスシールドが不足してきたため、本学有志職員により、手づくりフェイスシールドが開発され、作成して施設に提供を行いました。また、その作成方法を伝えることにより、施設スタッフによっても作成されることとなり、個人防護具をきらすことなく安全に患者ケアを実施することができました。

    2.学内情報共有方法

    神戸市新型コロナウイルス感染症支援開始にあたり、支援を行う教職員間での情報共有が不可欠であると考え、Moodle(学習マネジメント・システム:LMS)に特設ページを開設し、教職員限定の情報交換の場を設けました。Moodle上に作成したコンテンツとしては、軽症者施設概要、業務マニュアル、PPE着脱手順動画、こころのケア、業務報告掲示板、リンク共有掲示板、デブリーフィング用自由記載掲示板、電話相談等があります。

    これにより、教員が一同に会すことなく、施設概要や、業務内容を事前に把握し、関連最新情報を確認することができ、動画でPPE装着動作をみて、学内で自主練習をしたうえで、初出務に臨むことが可能となりました。外出自粛、テレワーク中にあっても、統括または、前勤務者がすべてを申し送る必要なく、スムーズな支援体制を築くことができました。なお、閲覧者は教職員に限定されており、外部からの閲覧はできないよう情報の保護には留意しています。

    おわりに

    今回、神戸市看護大学では、兵庫県や神戸市からの委託を受けて、新型コロナウイルス感染症対策支援を、最もニーズの高かった3月末より、直接的に電話相談、宿泊所支援等に関わった有志の教職員だけではなく、それをサポートする教職員全員が一丸となり、役割分担をしながら組織として取り組むことにより、継続した活動を行うことができました。

    市役所等における電話相談においては、保健師、看護師等と連携し、日中のみならず夜間帯の後方支援を行っています。軽症者施設での看護シフト業務に対しては、オンライン授業の開始準備に追われる中、感染リスクへの恐れもあいまって、組織として支援活動を行っている大学は、全国的にみても、少ないようです。本学では、神戸市軽症者施設開設時から、業務に携わり、保健所医師、保健師と連携し共に感染防止策を徹底しました。軽症者施設で個人防護具を装着して、患者ケアを実施することは、ガイドラインでも濃厚接触者にあたらないことが示されており、そのことを職員間で共有し、また、3密を避ける等、多職種が連携して入所者及びスタッフへの安全で安心できる環境を整備している結果、これまで、軽症者宿泊施設で施設内感染が起きることなく経過できています。

    総じて上述した活動は、新型コロナ感染症の全国的な拡大がみられる中で、大学の教職員の連携・協働のもと、本務である教育・研究活動に支障をきたすことなく、出務を継続できています。このような看護系大学における活動は全国的にも先駆的なものであり、今後同様の状況が生じた際に1つのモデルを示すことができたと考えます。

    現在、新型コロナウイルス感染症患者の数は軽減し、全国的にも緊急事態宣言が解除されていますが、今後第2波の患者数の増加が起きる可能性があります。限られた医療・保健分野の人材が対応し続けることは、社会問題として提起されている医療保健従事者の疲弊、差別、ひいては就業の継続困難等喫緊の課題が生じており、これらに対し中・長期的に戦略的な対応が必要です。本学と神戸市が実践した、神戸モデルは、行政や医療機関が大学と連携することにより、教育・研究・社会貢献の視点から、最前線の現場を支援することによって、医療崩壊を防ぐのみならず、最新の研究結果に基づいたケア提供体制を築くことで患者や住民等の健康課題への対応の質の向上に貢献できると考えます。

     


    この取り組みは、日本災害看護学会のホームページに、【新型コロナ感染症軽症者宿泊療養施設-神戸モデル:神戸市と神戸市看護大学の連携について】として紹介されました。

    日本災害看護学会のホームページ


     

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