本学は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が実施している「日本・アジア青少年サイエンス交流事業」(さくらサイエンスプラン)の支援を得て、ダナン大学医学薬学部看護学科より計8名(教員3名、学生4名、引率者1名)の方を招聘しました。
「アジアの高齢化社会に向けて地域住民と創る看護教育」をテーマに、2018年12月11日(火)から8日間の日程で行われました。
12月11日(火) 懇親会、来日オリエンテーション
懇親会では、サンドイッチなどの軽食を囲みながら、自己紹介や琴サークルによる琴とピアノ演奏を楽しみ、ダナン大学の皆さんは琴の演奏にチャレンジし和やかに過ごされました。その後、来日オリエンテーションでは、大学の簡単な案内やホテルまでのアクセス、電車の乗り方、スケジュールの確認の説明を受けました。
12月12日(水) 大学表敬、キャンパスツアー、基礎看護演習見学
2日目は、本学の鈴木学長と池田教授、渡辺教授、そして片倉教授らから歓迎を受け、ダナンの皆さんと自己紹介など日本語と英語ベトナム語を混ぜて行われました。その後、本学の教育体制とCOCの取組について担当の片倉教授と石原教授から説明があり、活発な質疑が交わされました。
キャンパスツアーでは、研究室訪問や講義棟、実習室、図書館などを巡った後、食堂で本学の教員と学生と一緒にランチを楽しみました。
午後からは、本学1年生の基礎看護技術演習Ⅰ(洗髪)を見学しました。ダナン大学の教員の中には、洗髪の授業を担当されている方がおり、大変興味深く見学されていました。演習最後には、本学とダナンの学生が片づけを一緒に行う場面がみられました。
12月13日(木) 兵庫県看護協会と訪問看護ステーション訪問、竜が台懇親会
3日目は、兵庫県看護協会を訪問し、看護協会の仕組みと役割、看護師養成数と潜在看護師への支援、今後の重点政策および事業について講義を受けました。ダナン大学から、外国人受け入れの現状、ベトナムから来日した際に、日本の看護師として働けるのか、看護協会に加入できるのかという質問がありました。現在、政策を整えている最中であることと、日本での看護師国家試験に合格すれば、日本で看護師として勤務できること、看護師資格があれば、看護協会に加入できることが回答されました。
次に、神戸訪問看護ステーションに行き、訪問看護の実践紹介、質疑応答の後、訪問看護ステーションの見学を行いました。質疑応答の中で、ベトナムの訪問看護はあるが介護は家族の役割の認識がある事、ベトナムでは看護と介護での用語が区別しにくいため、ベトナムから看護師を目指して来日したにもかかわらず、介護の勉強になってしまうことへの疑問などが話題に出ました。
午後からは、竜が台懇親会が開催され、竜が台、菅野台の計8名の民生委員さん、北須磨支所の課長と保健師が参加されました。最初に石原教授よりCOCの概要説明の後、ダナン大学側より「介護保険は貧しい人も入れるのか」「介護保険は素晴らしい制度、ベトナムにはまだない」「ダナンでは、家族に看取ってもらわないでお金を払って他人に見てもらうことは寂しいこと」「日本は少子化になる前にどうして対策を立てなかったのか?ベトナムは高齢化に備えて2人っこ政策をやめた」「ベトナムでは死ぬことが予測されたら家に連れて帰ることが普通。病院では死なない」などの発言があり、民生委員さんが「日本でも昔、私たち(民生委員)がこどものころは家で看ていた。今は家族が小さくなり、仕事で忙しいので、施設に入る」「家で最期を迎えたいのは本音」「お金を払って他人に見てもらうほうが気が楽」などと答えて、両国の文化や死生観の違いなど学びあう機会となりました。
12月14日(金) 看護学原論・震災復興支援の講義への参加、ダナン研修学生との交流会、クリスマスパーティー
4日目は、教育ボランティアさん30名の協力により行われている、1年生の積極的傾聴、コミュニケ―ションの演習「看護学原論」に参加しました。学生は小グループに分かれ、地域の教育ボランティアさんとの会話から聞き方、話し方などを実践的に学ぶ演習で、ダナン大学の皆さんも各グループに入り、その様子を見学していました。日本語での演習だったので、簡単な英語通訳に教員が入ったり、学生同士でアプリや英語を介して会話をしていました。ダナン大学の教員は、とてもいい演習でダナン大学でも取り入れたいが、地域の協力者をお願いするのが課題ですと話されていました。
午後からは、震災復興支援ボランティアについての授業に参加され、阪神・淡路大震災直後に神戸市看護大学の前身である神戸市看護短期大学で有志教員・学生合わせて約50名が「看護短大ボランティア」を結成し、仮設住宅と復興住宅で健康支援ボランティアを行ったことなどが紹介されました。池田教授は、当時、学生たちと共に被災住民の生活の自立支援、健康維持・増進支援、住民間の交流支援を行った様子を紹介し、被災者を身体と精神の両面から支援することの重要性を説明して、今後も震災について風化させないことの重要性を訴えました。
次に、これまでに海外看護学研修でダナンに行った本学の学生とダナン大学の皆さんとの交流会が開かれました。それぞれが自由に話をし、歌を歌い、ダンスをして過ごし、クリスマスパーティーでのダンスの練習もして一緒に楽しむ時間となっていました。その後の学生自治会主催のクリスマスパーティーでダナン大学の皆さんがベトナムPOPSの歌とダンスを披露し、ビンゴゲームや学生サークルの余興などを楽しみ、本学学生との交流を楽しんでいました。
12月15日(土) 年忘れ餅つき会、人とみらい防災センター見学、神戸ランドマーク観光
5日目は、春日台ふれあいまちづくり協議会主催の「年忘れもちつき会」に参加しました。ダナン大学の皆さんは地域住民とバザーの販売やぜんざい配付のお手伝いを行い、言葉の壁を超え楽しそうに取り組んでいました。餅つきでは実際に餅をついたり、ぜんざいを試食したりすることで、地域住民とふれ合い、また歳末に向けた日本の文化に触れる機会になりました。
午後は、人と防災未来センターに移動し、阪神大震災の追体験ができる映像鑑賞や震災後の復興の取り組みをまとめた展示、体験者の語り、防災・減災の取り組みの展示を観覧しました。地震による津波からの避難体験をしたり、センターのボランティアの通訳の方と話したりする機会がありました。その他の自然災害に関連した展示では、ベトナムの洪水や台風の災害について話していました。その後、神戸市のポートタワー、ハーバーランドで観光を行いました。
12月17日(月) 在宅看護論の講義への参加、中央市民病院・地域連携室見学
6日目は、2年生の授業「在宅看護論」に参加し、ダナン大学のチー講師よりダナンの高齢者看護の実態についてのプレゼンテーションが行われた後、片倉教授より日本の介護保険や訪問看護についてのレクチャーが日本語と英語で行われました。ダナン大学の皆さんは、日本のサービスは自国にまだないサービスや看護の内容であることから、高い関心を示していました。
午後からは中央市民病院に移動し、看護部表敬訪問後、感染症病棟、産科・小児病棟、救急外来、救急病棟を見学しました。感染症病棟では、空気感染も防御できる密閉性と、二重窓ではあるが外の景色がみえる開放性の二つを兼ね備えている病室にかなり興味を示し、質問を重ねていました。産科・小児病棟では、外来と病棟が繋がっている事の利便性、救急外来、救急病棟では、様々な患者が搬送されてくることを想定して、備品の配置や部屋が効率よく配置されていることに感心されていました。
最後に、会議室で地域医療連携推進部より、日本の地域包括ケアシステムの紹介と、中央市民病院の役割である急性期病院からの地域連携の在り方の説明が行われました。日本は医療保険と介護保険でカバーされていることなどが説明されました。ダナン大学の皆さんは、ベトナムでは、職業団体がナーシングホームを設立している例も多く、まだまだ国の制度が追い付いていない事、家族や知縁者の介護が多いことなどを語られ、日本の方が超高齢化が先に進んでいるため大いに参考にしたいと述べていました。
12月18日(火) 修了式、ランチパーティー
最終日、ダナン大学学生は、さくらサイエンスプランでの学びを最終報告として発表しました。その後、本学の鈴木学長より修了書とさくらサイエンスバッジおよび本学からのお土産などの授与が行われ、集合写真が撮影されました。昨年ダナン研修に行った本学学生や教職員が参加して和やかな修了式となりました。
その後、ランチパーティーでは、プログラムに関わった教職員や、以前ダナン研修に行った学生、今年3月にダナン研修に行く予定の学生などが参加し、一緒に寿司やサンドイッチなどを楽しみ、歌を歌い、SNSアドレスの交換などの交流が続きました。
最後に、ダナン大学の皆さんから、この研修での学びは、非常に印象深く、ベトナム及び日本の看護専門職やベトナムでの今後の取り組みに役立つものである旨、プログラムの継続の希望、ダナン大学学生からは日本で学びたい、働きたいと思ったとの感想を頂きました。また、それぞれの訪問地で親切に説明をしてくださった方々に感謝の思いを述べられていました。本学学生にとっても、他国の看護学生を受け入れ、自国の文化や看護の紹介をしたり、異文化や他国の看護を学んだりする貴重な機会になったことと思います。
末筆ではございますが、今回訪問させていただきご対応いただいた病院機関・団体等の関係者の皆様をはじめ、地域ボランティアの皆様、ご支援いただいたJSTに厚くお礼申し上げます。