沿革・理念
沿革(歴史)
設置の趣旨
我が国では、人口減少、少子高齢化が進行中であり、2040年に高齢者人口がピークを迎える。2040年を展望し、誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現を目指して、住民の「健康寿命の延伸」と「多様な就労・社会参加」とともに、「医療・福祉サービスの改革による生産性の向上」への取り組みが必要とされている。このように多様化・複雑化する地域社会のニーズの変化に応じて、市民と協働して地域の健康課題の解決に取り組み、生活の質の向上に寄与すると同時に、地域への貢献を教育研究に繋げ、その成果を新たに地域住民に還元することで、地域も大学もともに発展していくことをめざして、本センターは設立された。
沿革
神戸市看護大学は、阪神淡路大震災の翌年の1996年に開学し、兵庫県及び神戸市の復旧・復興とともに歩んできた歴史を持つ。2006年度の文部科学省による現代GPの助成事業「地元住民と共に学び共に創る健康生活」に始まり、現在に至るまで地域に根ざした教育・研究・地域連携活動を行ってきた。
2009年度に、地域社会における健康支援の推進と、教育・研究における地域との交流を発展させることを目的として、「神戸市看護大学健康支援地域連携センター」が開設された。2012年度には、従来の国際・地域交流委員会を統合して国際的な交流活動も含めた「地域連携・国際交流センター」となり、地域連携、国際交流、教育・研究活動を全学的に展開した。さらに2013年度には、文部科学省の地(知)の拠点整備事業(Center of Community:以下COC 事業)で、「地域住民と共に学び、共に創るコミュニティケアの拠点づくり」に取り組み、2014年度に、地域連携教育・研究センターが開設され、西区を中心に地域貢献活動を継続し、地域住民との交流、健康増進活動等を行ってきた。
これらの取り組みを発展させ、2021年4月にいちかんダイバーシティ看護開発センターが開設され、兵庫県や神戸市の事業も受託しながら事業拡大し、地域連携、健康支援、在宅ケア支援、国際交流、保健師キャリア支援センター、地域保健支援、臨床看護連携、災害看護、リカレント教育の9つのグループ事業が展開された。またグループの他に、主体的にウクライナ支援、フットケア支援もプロジェクトチームとして活動を行ってきた。
その後、2025年4月には、実施してきた事業は継続的に行いつつ組織を再編し、公立大学法人の使命である教育・研究・地域貢献をさらに一体的に発展させ、センター機能のさらなる拡大を意図して、地域貢献部門、教育開発部門、研究開発部門の3部門を創設し、名称も「いちかん看護開発センター」に変更した。
2006年~ | 文部科学省の現代GP「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」の助成を受けた事業の実施(~2008年度) |
---|---|
2009年 | 「健康支援地域連携センター」の開設 |
2012年 | 健康支援地域連携センターが、従来の国際・地域交流委員会を統合して国際的な交流活動も含めた「地域連携・国際交流センター」となり、地域連携、国際交流、教育・研究活動を展開 |
2013年 | COC事業における「地域住民と共に学び、共に創るコミュニティケアの拠点づくり」への取り組み(~2017年度) |
2014年 | 「地域連携教育・研究センター」の開設 |
2021年 | 「いちかんダイバーシティ看護開発センター」の開設 |
2025年 | 「いちかん看護開発センター」に名称変更 |
理念、目標
理念
本学では2020年9月に日本学術会議の看護学分科会が提言した「地元創成看護学」の実装を、教育研究のみならずセンター事業においても目指している。「地元創成看護学」とは「地元の人々の健康と生活に寄与することを目的として、社会との協働により、地元の自律的で持続的な創成に寄与する看護学」であると定義され、地元の人々が課題解決に向けた方策を自ら考え創っていくことを可能にするものであるといわれている。
本センターでは、この「地元創成看護学」の考え方をもとに、年齢、性別、人種、国籍、宗教、価値観、ライフスタイルなどが異なる多様な人々が共に生きる地域社会の中で、一人ひとりの生存、生活、尊厳を尊重し、個人とコミュニティの持つ豊かな可能性を実現することを目指している。そのため、多様化・複雑化する地域社会のニーズの変化に応じて、地域の人々と協働し、健康課題の解決を図る。また、教育研究の成果を絶えず地域の人々に還元し、生活の質の向上に寄与するとともに、地域住民、専門職、自治体、関係機関(職能団体や民間企業)と連携し、地元の課題解決に取り組む。
個人とコミュニティとの協働により、地元というローカルに働きかけた経験を蓄積し、新たな知見を得て、その知見をグローバルにも展開し、国際的な人・文化交流ネットワークの拠点を構築することをめざすものである。
目標
本センターでは、神戸市を中心としながら、兵庫県下の様々な地域を地元ととらえ、公立大学法人として、教育研究活動の成果を地域社会に還元することを目標としている。そのため、以下の2025年度から2030年度までの公立大学法人神戸市看護大学が達成すべき第二期中期目標のうち、本センターが関係する部分を示す。
地域課題の解決や市の政策課題への貢献を担う、学術研究の推進
看護学をはじめとする各学問分野の発展に寄与する研究に取り組むとともに、神戸市の高等教育機関として、地域社会における保健・医療分野のさまざまな課題解決に資する研究に取り組み、国内外に向けて研究成果を発信し、各分野の学術的発展並びに市民の健康寿命の延伸等市の政策課題の解決に貢献する。
このため、社会の急激な変化に対応できるよう、更なる外部資金獲得及び人材の確保を目指して、研究環境及び研究組織を充実させるための制度やその支援体制構築を推進する。市民との連携・交流による地域の保健医療への貢献の推進
地域課題の解決に向け、地域や関係機関等と連携した教育研究活動、地域貢献活動を推進し、その成果を積極的に市民へ還元するとともに、市民に信頼され、貢献できる大学として、公開講座等の実施、大学施設の開放等を行うことにより、市民の生涯学習に寄与し、市民との交流を促進する。
また、地域に看護人材を供給するため、看護職者の生涯学習の拠点として、新たな学びのニーズに対応したリカレント教育など看護人材の就業継続支援や復職支援を引き続き実施する。グルーバルな視点を培う、国際交流の推進
神戸市外国語大学をはじめとする市内大学と連携し、国際都市神戸にある大学として、国際化が進む保健・医療分野で働く外国人のキャリア開発等、当該分野で活躍できる人材の育成に貢献する。
また、多様な価値観や文化的背景、生活習慣等に配慮できる国際的な感覚を有した人材が求められていることから、異文化への理解やグローバルな視点と感覚を培うため、海外研修による異文化体験や地域で暮らす在住外国人との交流、外国の大学との国際交流を推進する。効率的で機動的な組織運営体制の構築による地域の発展への貢献
時代の変化や新たな社会的ニーズに対応できるよう、効率的で機動的な組織運営体制を構築するとともに、学外から登用する役員や委員の意見や、学生の視点も積極的に取り入れ、開かれた大学運営を推進する。
また、学生や高度専門化する現場のニーズに対応し、外部教員の活用を図るなど、多様な人材の確保と教職員の能力向上に取り組む。多様な自己収入の確保・充実と経費の適正化
科学研究費補助金等の競争的資金や共同研究・受託研究資金及び寄附金等の外部資金の獲得に積極的に取り組む。
組織体制
いちかん看護開発センターは、センター長および、地域貢献部門、教育開発部門、研究開発部門の3部門長のもと、センター専任教員と全教職員が必要な事業にかかわることで、センターの理念に掲げる地元創成看護の実装を行う。
地域貢献部門は、従来の健康支援、地域保健支援、災害・防災支援グループが担当していた事業を継続し、コラボカフェ、いちかん・まちの保健室、防災・減災支援、地域の保健医療分野で働く外国人のキャリア支援などを担当する。
教育開発部門は、従来の地域連携、在宅ケア支援、保健師キャリア支援、リカレント教育グループが担当していた事業を継続し、看護専門職の継続教育や地域住民を対象とした生涯教育、保健師のキャリア支援、臨床連携といった地域の人々の教育ニーズに応えるだけでなく、新たな教育手法の開発や教員へのFDなども担当する。
また研究開発部門は、従来の研究推進委員会が担当していた内容を継続し、共同研究の推進、教員の研究力向上、研究体制の構築や研究費獲得支援、論文投稿支援、産学官連携研究の推進、大型研究費の獲得などを担当する。
これらの3部門は相互に関連しているため、連携しながら効率的・機動的に事業を運営し、発展・強化させていく体制とした。