療養生活看護学領域 急性期看護学分野の佐藤智夫先生による研究論文「集中治療室(ICU)の面会禁止方針が長期人工呼吸管理患者におけるせん妄に与える影響:単施設後方視的観察研究)」が、医学系オープンアクセスジャーナル「Cureus」に掲載されました(2025年8月)。
本研究では、2019年から2022年にかけて神戸大学ICUに入院した359名の長期人工呼吸管理患者を対象に、コロナ禍で導入された面会禁止政策がせん妄の発生や持続期間に与える影響を検討しました。結果として、面会禁止前後でせん妄の発生率にわずかな差(73%→66%)が見られたものの、統計的に有意ではなく、持続期間にも差は認められませんでした。また、リモート面会の有無による影響も確認されませんでした。
これらの知見から、せん妄予防には家族面会だけでなく、環境調整や認知的刺激などの多面的な非薬物療法の重要性が示唆されました。本研究は、今後のICU面会の有り方を検討するために貢献すると期待されます。
本研究では、長期人工呼吸管理が必要な重症患者さんと家族の面会は、せん妄の発症率や期間と関連を示すことはありませんでした。本結果は、今後のICU面会ガイドライン検討に役立つ知見であり、引き続き臨床現場に貢献できる研究を進めていきたいと考えております。
本研究は神戸大学ICUの看護師の皆様との共同研究であり、せん妄の実態と対策への関心から始まりました。また、本学の神谷先生には統計解析面でのご助言を、赤松先生には研究調整や臨床的考察の深化に協力していただきました。
佐藤智夫(療養生活看護学領域 急性期看護学分野)